喪失訓練
A道化



下方を流れる
動けないアスファルトを
凝視している
夏の衣服の軽率な体で、出来うる限り
常に重力のことを忘れず
下方を流れる、動けないアスファルトを
凝視している


歩く私の影は黒く透き通り
動けない夏の形に沿い、こっそり、包んでは解いて
マンホールの絵柄の熱を、炭酸飲料の空き缶の粘つきを、歩道の段差の磨耗を
包んでは解いて、包んでは解いて
決して握り締めず、軽く、包んでは、解いて
軽く、流れるように手放すばかりだ


それらを凝視している
歩く私の影は黒く透き通り
動けない夏の形に沿い、包んでは解いて
それらの流れを凝視している
音も立てず、こっそり
夏の動かし難い喪失に
影を用いて、きちんと備えている



2004.6.19.


自由詩 喪失訓練 Copyright A道化 2004-06-30 05:18:18
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