せせらぎ
右肩良久
早春 せせらぎが白昼の形式に挿入されている
のさ
皮膚に嗅覚をはたらかせると
柑橘系の香料のにおいのするあなたよ
身体を重ねて両手を握りあえば
言葉の裏側を逆さまに歩いているね
僕らは。
「それから」と言うよりも舌は舌同士でからんでいるほうがいい
澄んだ澄み切った唾液よさらさらとせせらぐ暗渠よ小川よ
手の届きそうな時間の前方で
空に満開の桜の鼓動が
あるぜ
一億枚の花弁が散る散る風のない幻覚の温かさの
中に
いちまいがバレリーナのするように回っている
どういう運命さ、その意味とは違う特異性は?
ああもっとその白くふくよかな脚で僕の体を締めつけて欲しい
ジャンクな事物の結節である僕が
ほぐれて。ほぐれて。
せせらぎの音に流され
軽く宇宙が消滅するまで