せせらぎ
右肩良久

 早春 せせらぎが白昼の形式に挿入されている
 のさ
 
 皮膚に嗅覚をはたらかせると
 柑橘系の香料のにおいのするあなたよ
 身体を重ねて両手を握りあえば
 言葉の裏側を逆さまに歩いているね
 僕らは。

 「それから」と言うよりも舌は舌同士でからんでいるほうがいい

 澄んだ澄み切った唾液よさらさらとせせらぐ暗渠よ小川よ
 手の届きそうな時間の前方で
 空に満開の桜の鼓動が
 あるぜ
 一億枚の花弁が散る散る風のない幻覚の温かさの
 中に
 いちまいがバレリーナのするように回っている
 どういう運命さ、その意味とは違う特異性は?

 ああもっとその白くふくよかな脚で僕の体を締めつけて欲しい
 ジャンクな事物の結節である僕が
 ほぐれて。ほぐれて。

 せせらぎの音に流され
 軽く宇宙が消滅するまで


自由詩 せせらぎ Copyright 右肩良久 2008-03-02 21:47:37
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