ひとり ともしび
木立 悟




壊れた光を抱き
小さな別れが灯り
足もとに背にまとわりつき
押しのけても押しのけても
指が沈むほどやわらかな
淡くやさしいうたを唱う


ひとつはひとつだと言う
それでもふたつだと言う
ふさふさ笑い
かがやく珠の箱に手を入れ
抄ってはこぼれる夜を語る


歩幅に歩幅が入りこみ
重なりもなくからまりもなく
あたたかさだけがはばたいて
眠りかけたものを起こす
切れはしのはし
つまむ指さき
さきからさきへ
わたるひびき


ほつれてゆく影
水の盾
再び忘れる
髪の行方
堕ちつづけても
わけを拒むもの
器の坂を流れてゆく


到きゆくもの
燃えさかるもの
均されることなく
ひとりきりのもの
掃かれることなく
たたずむもの


砂の光が根元を覆い
むずがゆく枝と同じ夜
ひとつの外側に常に在り
在ることを唱いつづける粒たちの
目を閉じたままの笑みの手のひら
こがねと鬼火の三叉路に舞う
















自由詩 ひとり ともしび Copyright 木立 悟 2008-03-01 15:34:08
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