物言わぬ人形
真紅
どうせ生まれたなら何かを成したいと誰もが思うはずだ。夢を抱くはずだ。成功を夢見るはずだ。
どうせ死ぬなら生きてても意味ねぇって誰もが思うはずだ。絶望するはずだ。嘆き悲しむはずだ。
でもどういう訳だか成功はなかなかやって来ないし、死ぬことも遠い未来に思える。その日々を重ねる。
時々、俺は絶対誰かに生かされてるんだと思う。いや違う、遊ばれて玩具にされてるんだと思う。
悲観的になって夜に胸が高鳴り静寂がとても怖くて、誰かが叫びそうで、戦争が始まりそうで、朝には死んでいそうで、とても怖くて。
でも明くる日には前向きになってたりする。音楽聴いて、テレビ見て、誰かと話したり、小さな成功をしたり。
絶対誰かが俺を玩具にしてる。そいつはきっと他にも何百何千も玩具を持ってる。汚ねぇメッキのはがれたミニカー、噛み跡のついてるソフビ人形、挙げればきりがないくらい。
使い捨てなんだろ?ってそいつに聞いてやりたい。どうせ捨てんだろ?またパパやママにおねだりして新しいの買ってもらって、そいつを正義の味方役にして、俺を悪者役にして、ぶつけたり、高いところから落としたり、腕を引き抜いてみたりするんだろ?
でもそれはお前の中だけの善悪基準だ。話の筋なんかいっこも通っちゃいねぇ。自己満足に優劣をつけ、脈略もなく壊す。正義の味方は正当な理由なく、悪者を五体不満足にさせる。
でもきっと次の日には、善悪を逆転させたりしてまた遊ぶんだろ?そりゃ楽しいよな。昨日までヒーロー気取りだった奴の首を引き抜ける理由が自分の中で出来たんだから。正義の味方は実は悪者だったとかいう筋書きか?
そんな遊びはよ、こっちにしてみりゃ迷惑以外の何物でもねぇんだよ。やりたいようにやらせてくれよ。なぁ、思い通りに歩ませてくれよ。
でもよ、お前がいなけりゃ俺たちは、物言わぬ人形なんだよな。