臨月
雨を乞う

 

 君の爪を追い駈ける僕の瞳が乾いている。選んだカードで犬が吠え、西の空に嬰児を孕む満ち過ぎた月がじっとりと沈む。辰巳の空中から見た東京の亡霊がゆっくりと赤色の息を吸い、そして吐く。月桂樹の輪に踊る君の未来との融合、汲み取った水をまた海に返そうと、その涙を傾ける頭上には!言葉を欠いた光の羅列の数を数える、一、二、三、四、五、六、七。光のない海の上すら両手でも余る星。

 いつだって僕は夜を生きていた、ささやかな食事のような悲しみと甘いバターの馨る慈しさ、それと君への美しい言葉を引き連れて。東京は今日も問う、お前の近似値に振り分けられた着地点はどこだ?閉じたナイフ、焼けた肉、血走ったワイン、冷たい皿の上で蹲る十八番目のカードに刃を滑らせる。不穏な雲行き、甲殻類の関節がぎちぎちと高鳴れば、僕の両足の隙間から地は溢れ、海に塗れた忌まわしき畸形の肉塊が這いずり出てくる、雨のソースを添えて、月よ、どうぞ召し上がり下さいな。La luna, Bon appetit!

 


自由詩 臨月 Copyright 雨を乞う 2008-03-01 00:40:22
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