名前についてのいろいろとわたくし
よしおかさくら

この季節は自分の名前が口々に交わされるので
用心しなければならない
迂闊に返事をしないように
ほいほいとついては行かないように
簡単に微笑んでしまわぬように
まんまと
好かれているなどと思わぬように

どこに行っても持て囃されるのは
わたくしではなく
綺麗な花なのだ
ひらがなではなく
漢字なのだ
小道の両側の並木なのだ
どこからともなく漂う
甘い香りなのだ
風が吹く度に散る花びらなのだ
弘前城のお堀を紅く染める、
捕まえようとしても手のひらをすり抜ける
美しさなのだ

最大にして最小のライバル
いやいやいや
自然をライバルにしようだなんて
身の程知らずな
けれども



名前負けですと
小声で俯くしかできなかったわたくしよ
光栄ですと胸を張れ


自由詩 名前についてのいろいろとわたくし Copyright よしおかさくら 2008-02-29 10:03:00
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