名前についてのいろいろとわたくし
よしおかさくら
この季節は自分の名前が口々に交わされるので
用心しなければならない
迂闊に返事をしないように
ほいほいとついては行かないように
簡単に微笑んでしまわぬように
まんまと
好かれているなどと思わぬように
どこに行っても持て囃されるのは
わたくしではなく
綺麗な花なのだ
ひらがなではなく
漢字なのだ
小道の両側の並木なのだ
どこからともなく漂う
甘い香りなのだ
風が吹く度に散る花びらなのだ
弘前城のお堀を紅く染める、
捕まえようとしても手のひらをすり抜ける
美しさなのだ
最大にして最小のライバル
いやいやいや
自然をライバルにしようだなんて
身の程知らずな
けれども
名前負けですと
小声で俯くしかできなかったわたくしよ
光栄ですと胸を張れ
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