卒業
yo-yo
せんせいが
黒板に大きな字で
「心に太陽を持て」と書いた
ぼくは
ポケットに子すずめを
持っていた
ときどきチチッと鳴くので
ポケットに手を入れたままで
柔らかい羽を撫でてやる
休み時間に弁当のごはん粒を与える
ぼくの指までも食べてしまいそうな食欲
巣から落ちてきたまぬけ
飛べない小鳥
タカコにやるつもりだった
そんなものはいらないと断られた
やっぱり匂い消しゴムの方がよかったんだろうか
子すずめだって
ポケットよりも巣の方がよかった
ぼくの心もポケットも
温かくなんかないだろう
くそっ ポケットに太陽を持て!
午後の算数の時間
ぼくの太陽がせんせいに見つかってしまった
没収しても処分に困るので
ぼくと子すずめは廊下に立たされた
次の日
ぼくは学校をさぼる
元気な病人は子すずめとたっぷり遊んだ
植木鉢で巣をつくって屋根に置いたら
どこかの親すずめがせっせと餌を運んできた
翌日も学校をさぼる
カーテンの陰から
昼間ずっと
すずめの親子を見張っていた
その翌日も学校をさぼった
雨だった
親鳥は来なかった
ゆうがた
子すずめが死んだ
卒業式の日
せんせいがまた
黒板いっぱいに
「心に太陽を持て」と書いた
せんせいが泣いたので
みんなも泣いた
黒板の字が見えなくなった
ぼくは震える手をポケットに突っ込んだ
ポケットは空っぽだった