三様
木屋 亞万
短歌の中では
私の言葉は少し
窮屈そうだ
緊張しているのか
書き終えた後に
爽快感が無い
満足いかない
温いビールのような
泡のないビールのような
缶の底のビールのような
刺激のなさだ
大将は目から笑う
お前は酒の種類を知らないんだ
ビールばっか飲みやがって
短歌は日本酒みたいなもんさ
ピリッとこねえとダメなんだ
あるいは俳句でも
言葉は窒息してしまって
悪い顔色になる
季語に苦しみ
神経を擦り減らす
規則少なな川柳でも
かかとが擦り切れる
刺身3枚だけのような
割り箸3本セットのような
きび団子3個だけのような
中途半端な寂しさだ
先生は鼻から笑う
君は規則の良さを知らない
自由なだけではいけない
制服をいかに着飾るか
いかにお洒落に刈り上げるか
校則の範囲内でどれだけ遊べるか
それが青春というものだ
規則の豊かな俳句か
俳句より洒落た川柳か
いつか君も青春を振り返り
どちらかを選ぶでしょう
でも散文も続かない
作文持久力がないので
文脈が涸れてしまう
言葉は散らばり
目的地を失ったまま
うやむやに消えていく
紅葉してない楓のような
近くでも買えちゃう土産のような
置場に困ってしまう置物のような
喪失感に襲われがっかりするのだ
旅人は口から笑う
貴方は飛ぶことを知らない
勢いが着いたら飛躍しないと
同じ場所を堂々巡りして
失速してしまうんだ
もしも離陸に成功したら
貴方はその充実感と喜びに
しばらく酔っていられる
だが然るべき場所に
上手く着地できなければ
貴方は空中分解するか
大怪我を負うことになる
まずは順を追って練習しないと
三人三様それぞれの道を行き
それぞれ同じ領域に暮らす
芋焼酎を呑みながら
マグロの刺身を3枚つまみ
富山の鱒寿司を頬張る
どれも良い味をしている