断わりきれないひと
恋月 ぴの

「ねえ、良いだろ?」

何が良いんだかと思いつつ
とりあえず
あなたの左腕にしがみついてみる

押し付けた胸のふくらみに気づいたらしく
慌てふためく様子が可笑しくて

かまととだとか
ぶりっこだとか
なんだか遠い昔の懐かしいことば

わたし断わりきれない女だから

あなたが求めているもの
知ってはいるけど
素知らぬ顔で歩調を合わせ夜の繁華街を彷徨う

そっちには無いと思うよ

あまりの険しさに足の竦むところとか
身近すぎて見逃しがちなところに
それはこっそりと潜んでいる

誰かの手垢にまみれた先に転がっているのは
あなたの求めているものじゃなくて

「ちょっと休んでいこうか」

自信なさげは頼りないけど
わたし断わりきれない女だから
モラトリアムなあなたの背中を押してみた




自由詩 断わりきれないひと Copyright 恋月 ぴの 2008-02-27 22:35:53
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