シュノーケル
伊那 果

気がつくと私は青い海の部品の一つで
どこまでもどこまでも沈んでいく
重力をなくした体は
潮をはらんでふやけたまま 
これは落下、と呼ぶのだろうか
そうか 海の底は青くなんてないんだ

こっけいな形の深海魚たちと遊びたかっただけなんだ
ただそれだけ

今までついたたくさんの嘘が胸を締め付ける
手探りしたつもりが これじゃただもがいているだけだ

ぶくぶくぶくぶく
左手に握ったシュノーケルを口にくわえる
ああやっと少し胸の痛みが消えた
どこまでなら沈める?
どこまでなら届く?

ぐっと足を踏ん張れば
また光の水面へ顔を出せるよね

蹴り上げた足が空を切る

底のない海もあるのだ きっと


自由詩 シュノーケル Copyright 伊那 果 2008-02-27 14:07:04
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