シュノーケル
伊那 果
気がつくと私は青い海の部品の一つで
どこまでもどこまでも沈んでいく
重力をなくした体は
潮をはらんでふやけたまま
これは落下、と呼ぶのだろうか
そうか 海の底は青くなんてないんだ
こっけいな形の深海魚たちと遊びたかっただけなんだ
ただそれだけ
今までついたたくさんの嘘が胸を締め付ける
手探りしたつもりが これじゃただもがいているだけだ
ぶくぶくぶくぶく
左手に握ったシュノーケルを口にくわえる
ああやっと少し胸の痛みが消えた
どこまでなら沈める?
どこまでなら届く?
ぐっと足を踏ん張れば
また光の水面へ顔を出せるよね
蹴り上げた足が空を切る
底のない海もあるのだ きっと