春遠からじ
木屋 亞万
中指から菜の花
首に蒲公英を飾り
髪には白詰草の花輪
紋黄蝶が降りてくる
温かい手に引かれ
飾りを崩さないように
ゆっくり着いていく
薄手の白いセーターが
日差しにぼんやりと光る
桜雲が流れて来たわ
違うよ僕らがそこに行くんだ
桜吹雪が吹いて来たわ
そうだね温かくひらめく粒が綺麗
ねぇこれは夢かしら
ああ実に夢らしい夢さ
だってまだ二月
行ってしまった一月
逃げるように二月
去るように三月
すぐに春は来る
花柄のワンピースは
閉ざされたクローゼット
ハンガーに着せられて
春の野山を夢見ている