「コラージュ」
菊尾

挨拶は「今晩は。」
説明のつかない虚ろな景色を背にして二人は遊ぶ
逆回転のカタツムリの殻ばかり集めるコレクター
「薄紫の笑顔が特徴的です」
君が見る夢はいつも捩れて歪んでる

しゃがむと大口の影に落ちてしまいそう
伸ばした小指の爪は紙みたいに薄くて鋭い
浮かぶ三日月を剥がすためには
あと何センチ必要なのだろう
きっとまだまだ足りないな

数年前の一言が耳の内側でザワザワするんだと相談してみると
君は僕の頭を振ったり叩いたり
出てきたものは傷ついた小さくて冷たい銀盤
取り替えて今は生まれ立てのその言葉を頭の中で再生中
心地よいから繰り返してみるよ延々と

ぐらぐら揺れる橋の上
流星群が森を燃やした
振動で橋が大きく笑う
二人は投げ出されて宙返り
反転した夜空に降り立つと
燃えていく森は夕暮れのようだった

帰りはさようならを言わずにじゃあまたね
色褪せてきた小指の糸は血液みたいに古い赤
得体の知れない僕らは秘密が豊富
連絡をくれる時は決まって真夜中
切り抜かれた二人の世界が一つに貼り合わされていく
君は最初に「今晩は。」と低くあてがうように口にする


自由詩 「コラージュ」 Copyright 菊尾 2008-02-25 17:37:49
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