「コラージュ」
菊尾
挨拶は「今晩は。」
説明のつかない虚ろな景色を背にして二人は遊ぶ
逆回転のカタツムリの殻ばかり集めるコレクター
「薄紫の笑顔が特徴的です」
君が見る夢はいつも捩れて歪んでる
しゃがむと大口の影に落ちてしまいそう
伸ばした小指の爪は紙みたいに薄くて鋭い
浮かぶ三日月を剥がすためには
あと何センチ必要なのだろう
きっとまだまだ足りないな
数年前の一言が耳の内側でザワザワするんだと相談してみると
君は僕の頭を振ったり叩いたり
出てきたものは傷ついた小さくて冷たい銀盤
取り替えて今は生まれ立てのその言葉を頭の中で再生中
心地よいから繰り返してみるよ延々と
ぐらぐら揺れる橋の上
流星群が森を燃やした
振動で橋が大きく笑う
二人は投げ出されて宙返り
反転した夜空に降り立つと
燃えていく森は夕暮れのようだった
帰りはさようならを言わずにじゃあまたね
色褪せてきた小指の糸は血液みたいに古い赤
得体の知れない僕らは秘密が豊富
連絡をくれる時は決まって真夜中
切り抜かれた二人の世界が一つに貼り合わされていく
君は最初に「今晩は。」と低くあてがうように口にする