歩日
ヨルノテガム
靴音が 何を考えている? と語りかけてくる
足音に追いかけられる歩行だ
定食でも食いたいなあ と洩らすと
それが本当にやりたいことなのか? と
非難めいた返事を返してくる
すると、そうでもないなあ と思えてきて
腹のことはうまく忘れることができた
しばらくすると、何も考えてないなら この赤い靴でも
磨いてみないか? と誘ってくる
靴音が靴の化粧を考えているとは、まあ わからなくもないが
自惚れが過ぎる気もする
お前は確かに擦り減っているし、先端は赤色がはげてしまって
白い皮地が浮かんできているな、と同意のあと
「磨いてやろうか」
と声に出した
靴音は静かに
押し黙った
もう街の雑踏に辿り着いていた
靴音は押し黙っていた
座った男は、やさしく聞いた
おい、何考えているんだ?
俺が何を考えているかぐらい本当はわかっているんだろ?
靴音は
重い口を開いた
何かに打ちのめされたがっているお前もめでたい奴だ
男は黙った
男はしばらく押し黙りたかった
「何か」はわかっているさ