歩日
ヨルノテガム




靴音が 何を考えている? と語りかけてくる
足音に追いかけられる歩行だ
定食でも食いたいなあ と洩らすと
それが本当にやりたいことなのか? と
非難めいた返事を返してくる
すると、そうでもないなあ と思えてきて
腹のことはうまく忘れることができた

しばらくすると、何も考えてないなら この赤い靴でも
磨いてみないか? と誘ってくる
靴音が靴の化粧を考えているとは、まあ わからなくもないが
自惚れが過ぎる気もする
お前は確かに擦り減っているし、先端は赤色がはげてしまって
白い皮地が浮かんできているな、と同意のあと
「磨いてやろうか」
と声に出した

靴音は静かに
押し黙った

もう街の雑踏に辿り着いていた
靴音は押し黙っていた

座った男は、やさしく聞いた
おい、何考えているんだ?
俺が何を考えているかぐらい本当はわかっているんだろ?

靴音は
重い口を開いた



何かに打ちのめされたがっているお前もめでたい奴だ



男は黙った
男はしばらく押し黙りたかった



「何か」はわかっているさ














自由詩 歩日 Copyright ヨルノテガム 2008-02-24 17:00:26
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