二十歳のころ
伊那 果

吾の中に沈んだ言葉掘り返す道具を空に忘れてきたり

一人でもよし我が言葉狂うほど愛する人と出会ってみたく

稚なさを勢いで継ぐ時期は過ぎ底をさぐれど我見つからず

雪降らぬあたたかき冬 成人の称号を手にねじ込まれたり

晴れ着にてはしゃぐ人らをテレビにてながめおる我が成人の日に

朽ち果てた時はひらひらとひとひらの灰になりたい 夕焼け小焼け

部屋に住む電機具たちのおたけびが明けゆく夜の眠りにまざる

自らの渇きを嘆きいるものの潤いとは何かすら知らず

自らを癒す言葉を前にして言葉を愛する幸せに酔う

どこまでも続く漆黒の間から青が静かにやってきました

まっさらに闇に包まれし空の底 茜の名残においはたちて

愛し合うことに羞恥はなくなりて過ぎた時間のふとかなしくて



短歌 二十歳のころ Copyright 伊那 果 2008-02-24 13:58:25
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