君と空へ
佐野権太

素数ばかりの現実を逃れて
羊水に包まれたような充足と安心を
浅い眠りにむさぼる、朝
休日の

まゆの内に垂れる
一本の危うい糸に吊るされた体躯を
淡白い光りの方角に傾ければ
のぞきこむ君の目が
みるみる
おはよう
のかたちにふくらむから
やばい

だって晴れてる
そんな理由だけで
肩から空に飛び込む君は
ぎゅんぎゅんのぼってゆくから
苦笑して
つい、追いかけてしまう

君の手をとり
雲を掻き
青い空を切り拓きながら
ひとは
こうして生きてゆくのかもしれない
と思う

行く末などわからないけれど
やはり
僕は君を愛する
やがて清楚な純白を
なごりのように引きずって
旅立つとしても
明滅するその微かな肺胞を
柔らかく光る繊毛のすべてを







自由詩 君と空へ Copyright 佐野権太 2008-02-22 23:26:09
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家族の肖像