「waste」
菊尾

舞いながら手を振るように燃える紙
「もういい」と決めた午後三時
欠落した感情を綴ることに筆を置いた
要らないものは捨てていく
空から降ってきたそれは灰ではなく
以前日記に残した私の筆跡だった

自制を止めたのはいつだろう
もう一人の私自身に
全て捨ててしまえばいいと
少しずつこの世界に順応していかなければと
私が私を導いていた

「乾性的である君は満ちることはない」
あなたは頬を優しく撫でながら私に言い聞かせた
冷たい指先がとても残酷に思えて

同じ性質のふたりは
互いの欠けた部分を理解しながらも
それを埋められないでいる
近すぎるために救えないことを知っている


月を待つ
眺めていると弧を描き廻る世界を肌で感じられる
過去は日記が持ち去った
現在は夜へ流し続けている
その先にある場所で私は何を捨て続けるのだろう
あなたは「拾うために捨てている」と私を説明した
月光が足元を染め上げていく
青白い足の甲
影が傍で佇む
疲れて重い頭をその胸に当てて聴いたあなたの鼓動
なぜかそれまで似ていると、そう思った


自由詩 「waste」 Copyright 菊尾 2008-02-22 19:47:26
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