「waste」
菊尾
舞いながら手を振るように燃える紙
「もういい」と決めた午後三時
欠落した感情を綴ることに筆を置いた
要らないものは捨てていく
空から降ってきたそれは灰ではなく
以前日記に残した私の筆跡だった
自制を止めたのはいつだろう
もう一人の私自身に
全て捨ててしまえばいいと
少しずつこの世界に順応していかなければと
私が私を導いていた
「乾性的である君は満ちることはない」
あなたは頬を優しく撫でながら私に言い聞かせた
冷たい指先がとても残酷に思えて
同じ性質のふたりは
互いの欠けた部分を理解しながらも
それを埋められないでいる
近すぎるために救えないことを知っている
月を待つ
眺めていると弧を描き廻る世界を肌で感じられる
過去は日記が持ち去った
現在は夜へ流し続けている
その先にある場所で私は何を捨て続けるのだろう
あなたは「拾うために捨てている」と私を説明した
月光が足元を染め上げていく
青白い足の甲
影が傍で佇む
疲れて重い頭をその胸に当てて聴いたあなたの鼓動
なぜかそれまで似ていると、そう思った