「 モドキストP.の独白その一。陽気なおちんちんと射精モドキと父モドキ。或いはぼくのニンゲンモドキ宣...
PULL.
一。
陽気なおちんちんはあまり射精しない。それは陽気な笑顔があまり本気で笑わないのと似ている、だから陽気なおちんちんはよく勃起をする、その勃起は陽気な笑顔がつくり笑いをするのと同じぐらい、巧妙かつ自然な「つくり勃起」である、つくり勃起をしたおちんちんは陽気に振る舞い、やがて前後に踊る、踊りはつくり勃起をする対の裂け眼によって変わる、激しい対の裂け眼には激しく、まったりとした対の裂け眼にはまったりと、陽気なつくり笑いがそうであるように対の裂け眼の容姿年齢性格に拘わらずその内の襞に入り込み、真の欲求をさぐり満たそうとする、そして陽気なおちんちんは射精ではなく、射精モドキをする。
射精は、勃起とは違い対の裂け眼を埋めるものではない、満たすものである、射精とは笑い声だ、声は精液であり射精をした襞の中で激しい生存競争を勝ち抜けば受精し、対の裂け眼の顔に、笑顔を産むことができる、その笑顔はまれにつくり笑いとは似ても似付かないものであることもある、が、そんなことは陽気なおちんちんにも、対の裂け眼にも、関係ないことである、つくり笑いがいつしかつくり笑いであることを忘れ本物の笑顔になるように、射精モドキでも、愛情を持って育てればそれは、本物のニンゲンモドキになるのである。
だからぼくは今ここに宣言する!。
「ぼくはニンゲンモドキだ。」
二。
ニンゲンモドキであるぼくはモドキストとして生きている。モドキストはこの島国のショウチョウだ、それは二セイキほど前の旧文明が、遠い海の向こうから呼ばれもせずにやって来たクロブネの大砲により姦通され、喪失したときに、そのカブレどもによって担ぎ出され祭り上げられ定められた、セイドだ、セイドとはカブレどものセイジの、奴隷になることだった。
クロブネの姦通によりセイヨクに目覚め、また、犯され犯すことにも悦びを覚えたカブレどもによって、新文明はまたたく間に拡大し、増長し、いくつもの国を犯し、また犯された、犯している間も犯されている間も変わらずカブレたちはセイドを利用し、巧みにぼくの祖父や曾祖父たちをセイジの奴隷して、使い捨てた、使い捨てられる恐怖はぼくたちをさらに従順にして蹂躙し、ぼくたちの感情は使い古され感情モドキになり、感情モドキはぼくたちをよりな完璧なニンゲンモドキへと、進化させた(適者生存。ダーウィン先生は正しかった!)。
ぼくはモドキストだ。二セイキ分のカブレどものセイエキによって穢され犯しつくされた純血の、ぼくはモドキストだ。
三。
今上モドキスト。ぼくはカブレどもにそう呼ばれている、ぼくが呼ばれる前はぼくの父モドキが、そう呼ばれていた、先週、父モドキは長い長い病モドキとの闘いに疲れ、この世を去った、父モドキの死はカブレどもによって死モドキとして扱われ、カブレどもが、まだニンゲンがニンゲンであることも知らずこのチ球が象によって支えられていた悠久の時代から脈々とこの島国に受け継がれてきたという「倣わし」、に則った祭祀によって、弔われた、それはどこか空々しいもので、白けた空から降り出した雨さえもが雨モドキだった、雨モドキに打たれ、眼から涙モドキを流しながらぼくは、父モドキの死を想い出していた、あれは死ではなく死モドキだとカブレどもは言う、今上モドキスト、セイジの奴隷であるぼくは、カブレどものことばに頷き、顔色を窺い、虚ろな沈黙の海で「はい」と「いいえ」の波間を漂流する、筏モドキだ。
だが父モドキは確かに死んだのだ。なぜなら父モドキはぼくがこの手で、殺したのだから。
四。
あの日。父モドキは、カブレどもが決してその存在を認めようとしない病(カブレどもが連れてきた医者たちは、ニンゲンモドキがニンゲンの病になど罹るはずがないと言った)、脳髄を喰い尽くしてゆく毒蟹の、あの痛みの中で、ぼくに殺してくれと懇願したのだ、だが父の死は死モドキだとカブレどもは言う、あれが死モドキであればぼくは、父を殺していないことになる、ニンゲンモドキであるぼくは殺人者になれず、殺人者モドキにすらなれない、ニンゲンモドキにとっての死が死モドキであるならば、今ぼくのこの命は、命モドキということになるのだろう、なるほどそうだ、だからこの島国ではコクミンの命がひどく粗末に扱われ、搾取され、カブレどもによって戯れに消費され、コクミンとコクドを守るジエイタイという名の軍隊モドキが何故か、この島国を今もショクミンチ化するあのクロブネの国の軍隊(モドキに非ず)によって守られ、コクミンは搾り取られ、クロブネの国の軍隊(モドキに非ず)に恍惚の自由を守られたカブレどもはそれを傘に着て、夜な夜なリョウテイで狩りをして言論を放尿し、酒池肉林の宴を繰り広げている。
すべてはまやかしだ。
すべてはこの島国のショウチョウであるこのぼくの命が命モドキである、その所為なのだ。
五。
ぼくにはぼくそっくりの双子の姉モドキがいる。姉モドキの存在はこの世に生まれてすぐに忘却され、まるで存在していないかのように広くコクミンにも忘れ去られ、扱われている、モドキストは男しかなれない、それはカブレどもが決めた理だ、カブレどもはぼくに知られたくないらしいが、ぼくは知っている、カブレどもが大好きなまだニンゲンがニンゲンであることも知らずこのチ球が象によって支えられていた悠久の時代には、女の、ニンゲンモドキがいて、その女ニンゲンモドキはモドキストになったという、またそれよりもずっと古い時代には、ミコという名の女がいて、ミコはぼくたちがそうであるように担がれ、祭り上げられていたのだという。
できるなら、ぼくはミコと話がしてみたい。ぼくとミコはきっといい友達モドキになれる、いや、ぴったりの恋人モドキになれるだろう、ミコとニンゲンモドキの間に生まれた子は、何と言われるのだろうか?子モドキ?ミコモドキ?…できることならその子は、ただのニンゲンとして産まれ、死んで欲しい。
死モドキは、ぼくがぼくの代でぼくの死を持って悠久に、その歴史を終わらせる。
それがモドキストとしてぼくに与えられた、死命なのだ。
了。