「seek」
菊尾
眠ってしまった
あんなに観たがっていた映画
青白く照らされた寝顔が綺麗に思えたから
起こさないように一枚撮ったんだ
ステンレスの浴槽で
いつまでも君と溺れていたい
海月みたいに漂っていられれば
誰にも邪魔されないでいられるのかな
呼吸を止めて
仰向けで墜落ごっこ
笑いあう、髪が舌に絡んで、指が宙を泳いで、
終わりが近付いてくる気配さえ愉しみながら
笑いあって、笑いあって、
どこまででも遊泳できそう
でも分かっていることが一つだけ
多分ここが限界で
これ以上は
愛せないよ
その横顔はきっとこの先も
瞼の裏で息をする
見慣れた表情が浮かぶたびに
きっと胸が痛くなる
明け方、無人のホームで
いつもみたいに小さく手を振った
形ある息を吐きながら
君が見ている景色はきっと僕とはべつのもの
何もかも知りながら
いつまでも君は笑ってる