「seek」
菊尾

眠ってしまった
あんなに観たがっていた映画
青白く照らされた寝顔が綺麗に思えたから
起こさないように一枚撮ったんだ

ステンレスの浴槽で
いつまでも君と溺れていたい
海月みたいに漂っていられれば
誰にも邪魔されないでいられるのかな

呼吸を止めて
仰向けで墜落ごっこ
笑いあう、髪が舌に絡んで、指が宙を泳いで、
終わりが近付いてくる気配さえ愉しみながら
笑いあって、笑いあって、

どこまででも遊泳できそう
でも分かっていることが一つだけ
多分ここが限界で
これ以上は
愛せないよ
その横顔はきっとこの先も
瞼の裏で息をする
見慣れた表情が浮かぶたびに
きっと胸が痛くなる

明け方、無人のホームで
いつもみたいに小さく手を振った
形ある息を吐きながら
君が見ている景色はきっと僕とはべつのもの
何もかも知りながら
いつまでも君は笑ってる


自由詩 「seek」 Copyright 菊尾 2008-02-21 17:50:38
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