「ノコリモノ」
菊尾
追わないよ
辿りもしないよ
もうただの幻だと知っているから
朝に沈み始める身体
声があなたの前では響かない
泣いていた
理由も分からずに崩れるように
背負っているのはいつかの痛み
誰にも何も話さずに
抱えた痛みを馴染ませようとしていた
戻れないの
ここまでの道のりは埋めてしまうから
切り離したこの場所で立ち尽くしたまま
あなたを他人に変えていく
悲しくもない現実が欲しいだけ
仕方が無いと割り切って
諦めた想いは何処へ向かったの
救いようの無いこんな感情は
とっくに期限切れを起こしているのに
沈めても燃やしても消えてはくれない
夢なんて潰えたはずなのに
身体は生きるために夢を見せようとする
あなたの匂いも仕草も口癖も
すべて忘れたいのに
記憶は曖昧に残ってしまう
また眠れない
閉じれば瞼の裏のあなたが笑いかけるから
だからまた、眠れない