胎動
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土と肉の熱を計る
なかば眠りながら
蝉の幼虫がさくらを吸っている
土をほじくり返し
あやしたすずめをその手ずからうずめ
いらなくなった枝を突けば
まるでそこだけが日溜まりのようです
一度は捨てた日めくりのしわをのばす
男の皮膚に重ねて綴るメモ
妖しく絡みつき熟れる山帰来
時が山姥の節た五指のように
爪づきかなしく見上げる空
水辺にひろがる

襟を立てて私の庭から去った人は
木もれ日の影になり日なたになり
二度と帰ってはこない
しかし花はやがてくる
ゆるい南風と手を取って
蜂が壺いっぱいの蜜を吸う
残された者はふるい瘤々のようです
動かなかった物が
動きはじめる
苔むす岩肌
食卓に並ぶ草の実
沖に漕ぎ出す少年の舟
黒を割り芽吹くチューリップ

忘れ去られたもの達がありました
それは今も土深く今を眺める
餌食にあふれ
子らに踏まれ
私のあって燃え尽きる夢を見た燐も
胎動は 春
火と雨に曝され
君のものになれ






自由詩 胎動 Copyright soft_machine 2008-02-20 15:19:36
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