鏡の女
beebee
楽しそうな女が一人、
鏡の中の自分に向かい合って、
自分自身のために化粧をしている。
口紅をつけて、自分に
ニッと笑いかける。
あんまり笑いすぎて目尻には
皺がある。
口の回りにはこわい産毛も光っている。
四十をだいぶ過ぎた女が一人、
自分の顔を塗り込めていく。
悲しいこともあったろうに、
憤ろほしいこともあったろうに、
頬紅をつけて、
自分自身に向かって
微笑んで見せる。
鏡の中の彼女は
息子の私なのかも知れない。
鏡の中の彼女は
彼女の夫なのかも知れない。
あるいは、
冷たく自分自身を見詰める、
彼女自身かも知れない。
これからも彼女は一人で化粧をするのだろう。
その時彼女は知っているのだろうか?
本当の自分自身の姿を。
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純情詩集