「人波の中で」
菊尾
実体がないようなそんな存在 
帰ることが出来ずに暮れていく 
なんだかうまく話せないから唇噛んで 
通りの人波を座りながら眺めてた 
言いかけた言葉のせいで息につまづいた 
それは今でもどこかに残っていて 
誰も居ない場所で呟いても戻ってきてしまう 
君が居ないとダメらしい 
終わり続ける日常は 
「いつか」で埋め尽くそうとする 
掻き分けて拾い上げて 
棘だらけでも放っておけない 
眠ればどこかへ転がってしまう記憶を 
探し続ける日は続く 
何通りもあった過程だったけど 
行き着く先はどれも一緒だったはず 
汚してしまったのは僕なのに 
最後に笑ったその顔が頭から離れないんだ 
窓ガラスに映る月 
少し目を離せば簡単に落ちていく 
逆らうことなく流れる人波 
許されなくちゃいけないのは君の方 
僕はまだ人波の中にいる