だいやりー。(番外編)
終
−今更なんで、思い出したりしてんだろう?
雪が降りしきる午後のメールでフラッシュバックして、彼の好きな桜は今年は遅くなるだろうなんて予測してみる。
桜の木の下に佇む白いジャケットの彼の姿は、思い返してみたらもう6年も昔のことになるのに未だに褪せる事なく心に煌めきを残している。
いくつもの思い出は、忘れたくないと願うたびにその輝きを失っていくというのに。思い出さなくても良いようなことが、ふと、水面に浮き玉のようにぽかりと湧き出すことがある。
− 。
−元気してるかな。
今年の雪は、上京してから1番よく降り積もっていた。去年は、何かあるたんびに雨。
−で、今年は雪か。
雪が降る前のしんと静かになる音のくだりが好きだ。
考えていたこと全てが、ネジの伸びきった懐中時計のようにピタリと止まる。
音に耳をゆっくりと澄ます。
− 、
ひとしきり降る雨の中で傘をさして向かってくる姿は、未だに愛おしい。
冷たい雨の中、見上げた真夜中の桜も。
いいことも、よくないことも雨の音に甘やかされていた。