虹を見ていた
未有花

虹を見ていた
空に放物線を描く光の帯を
虹を見ていた
あの日君と眺めた七色の輝きを
虹を見ていた
ただ黙って見ていた
思い出は今も胸に消えない懐かしい橋をかける

あの日僕らは雨上がりの森を
虹を目指して駆けて行ったんだ
虹は森の向こうで僕らを呼んでいた
道はぬかるんで靴が汚れてしまったけれど
僕らはぜんぜん気にならなかった
ただ空の向こうにかかるあの虹に
一刻も早くたどり着きたくてひたすら走り続けたんだ

森を抜ければ虹にたどり着く
あの時の僕らはそれを信じて疑わなかった
そしてあの虹に触れることができたなら
夢は叶うとそう信じていたんだ
けれども森を抜けても虹にはたどり着けなかった
虹は目の前に広がる草原の空の向こうに
ただ夢のように輝いていた
僕らはただ黙ってそれを見ていた

虹を見ていた
空に放物線を描く光の帯を
虹を見ていた
決して手にすることはできない夢の輝きを
虹を見ていた
いつしか消えてしまう
けれど永遠に忘れることのできない僕らの虹を

今君は遠く離れた街で暮らしている
君にもこの虹が見えるだろうか
あの日手にすることができなかった夢を追いかけて
君はこの街から出て行った
僕も夢はまだあきらめていないけれど
今はただ静かにここから見ている

七色の便箋に手紙を書いて君に送ろう
まだ夢を忘れていないと
僕らの虹はまだ消えてはいないと
僕の街から君の街へ橋をかけよう
空に輝くあの虹のように
いつか僕らの夢が叶うように

虹を見ていた
空に放物線を描く光の帯を
虹を見ていた
あの日君と眺めた七色の輝きを
虹を見ていた
ただ黙って見ていた
思い出は今も胸に消えない懐かしい橋をかける


自由詩 虹を見ていた Copyright 未有花 2008-02-18 13:51:30
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