朝の隙間
木屋 亞万
マグカップは一人暮しの部屋
マグカップは白い木製の机の上
白いカーテンは大きなベランダの窓
白いカーテンが小さなソファに触れる
ピアノが鳴っている向かいの一軒家
ピアノの音が途切れとぎれに越える電線
私はどこにいるのでしょう
体はどこにあるのでしょう
昼下がらない午前の爽やかさ
朝下がっている午前の穏やかさ
洗濯物は風に揺れてフローラル
洗濯物の回る小物干しが花のよう
うすい水色の空に白いタオルはぱたぱた
水色の空に白い飛行船はすいすいと
私の椅子は白い机の台所側冷蔵庫寄り
私の椅子だけ斜めに飛び出たままで
私はどこにもいない
私はどこにいるのだろう
スーパーでの立ち話を越えられずにいるのか
踏み切りで次の一歩を踏み切れないでいるのか
止まれの前で立ち止まったままなのか
あるいは自転車のペダルが重過ぎて動けないのか
自転車の車輪が破損して上手く転がらないのか
私はどこかに行ってしまった
私はいったいどこへ行ったの
家事に追われる朝の隙間
深呼吸して開いた感覚器に
差し込んでくる朝は心地良かった
あの私はどこにいったのか
私は家事をすべて済ませて
澄んだ空を飛行していたんだ
真っ白な飛行船になって