夢
fomalhaut
五歳のときに見た夢がいまだに忘れられない。
私はうす暗い階段をひとりでのぼっていた。それは石畳で、幅は人ひとり通るのがやっと、天井もすぐ頭上に迫っている。そして何段かごとに規則正しく踊り場が設けられており、そこにはたいまつの灯りがともされている。それがどこまでもどこまでもと続いている。光が見え、やっと外に出られるかと思うと、それはあのたいまつの灯りなのだ。それで私はうなだれて、また階段をのぼり始める。足音だけが反響している。それが何回も何回も無限に繰り返される。
目が覚めた私は母親に助けを求めた。そして母親の胸の中で泣いていた。
あの夢はなんだったのか。ただ階段をのぼり続けるだけという夢であるが、今でもふいにあの階段の映像が閃光のように頭に浮かぶことがある。その度に私は戦慄する。