四角いスイカ
餅月兎
それに
包丁を当てる夢を見る
それは
四角いスイカ
グロテスク又は滑稽
転がらないそのかたちは
妙な不安定を感じさせる
むしろ丸いスイカより
どこへも行けない窮屈さが
そのなかで蠢いているからだろうか
転がってみたいという願望が
四角い部屋を内側から殴りつけるからだろうか
お白州の被告人のようにかしこまったそいつらは
スーパーの片隅で裁きを待つ
気の毒に
ぼくの給料じゃ
余人の同情は買えても
きみは買えないよ
だから夢
それに
包丁を当てて
ぐっと押す
その感触を
味わいたい
平板な緊張と弛緩を繰り返す
ぼくの下半身
その向こうにある退屈
ふたつに割れたその果肉から
それを吹き飛ばすような
清冽な香りがひろがるのだろう