如月熱情
木屋 亞万

冬の木を見ていると
地面から出ている部分と
大地に伸びている部分の
形が同じに思えてくる
空気はやわらかいから
ぶはっぶさっと繁るけど
土は濃密で硬いから
がじぎぢずっと伸びる
だから木は頭でっかち
根はちいさく強い

冬の外套の懐や
ちょっとした日溜まりの
乾いた温もりの中に
夏への渇望が潜む
海綿という言葉が
青空に浮かぶ雲のために
あるような気がして
辞書を手繰る
朝焼けに情愛の象徴を重ね
夕焼けに青春の名残を思う
赤い空に入道雲を描いたかつての
私の右手の先は色鉛筆から
ねっとりした絵の具に変わり
肉感的に空を重ねる
右下から入り込む梢に
対応するように根を描いた

当初冬の木は世を忍ぶ
仮の姿である焦げ茶色だったが
その腹のうちを暴露したくなり
筆を洗ってしごいた後の
艶やかな指で紅色を
梢の芯として描き足す
小指はべったり紅に染まり
木も空より赤くなった

私はその絵を熱情と名付けた
冬の紅葉が好きになった
二月のある日
周りの全てが衝動だった


自由詩 如月熱情 Copyright 木屋 亞万 2008-02-16 12:06:44
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