さしすせそ、
望月 ゆき

正気を失いながら、それでも
わたしたちは、生まれてしまうのだろう
何度も、何度も、
そしてほんとうは
一度だって、死んだことはなかったのだと
臨終のそのときに、知るのだろう



     *



そこに海が横たわっていたから、
などという陳腐な理由で身を投じたことを
決して笑わないで欲しい むしろ
美しい弧を描いたそのあと、
クロールで泳ぎだすことの方が、とてつもなく
滑稽で、おろかなことなのだから



     *



夜がきたから寝ます、という号令がかかって
わたしたちは夜という不安定な時間を避ける
草の先端で羽化してゆく蝉の夢を見る
そうして、救われることと滅ぶことは
いつも正比例していく
朝がきたから起きます、という号令を
誰もかけたがらないので、いつまでも朝が来ない



     *



さしすせそ、
をくりかえし発声する
伝えたいことなんて、それでじゅうぶんに足りた
土に、体が半分埋まっている
生命のひとつひとつに名まえをつけるというゲームの
かけがえのないパーツであるという不自由を
叫び、そして祈るように
また わたしたちは
さしすせそ、
をくりかえしている



   


自由詩 さしすせそ、 Copyright 望月 ゆき 2008-02-16 02:31:34縦
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