癇癪ガール
小川 葉

ホームセンターで
出会ったやかんが
思ったよりも
紳士だったので
結婚した

その時代
ホームセンターなんて
あったの
母に聞くと
母は結婚写真を
持ってきた

やかん売り場の
一番上の棚で
銀色の父と母が
赤くなって
沸騰してる

あの頃
ホームセンターと言ったらね
母は自慢して
当時としては
父はかなりハイカラで
もてたらしい
そのたびに母は
癇癪をおこして
誤解しては
お湯を沸かしたのだと言う

あの紳士が
今ではこうよ

お銚子が一本
転がってる

それでも母は
懐かしそうに
結婚写真を見つめては
やかんの笛を
小さく鳴らすのだった


自由詩 癇癪ガール Copyright 小川 葉 2008-02-16 01:43:49
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