シリーズ 正方 1
あすくれかおす




さ る す べ り
い い き む ち
こ こ に と て
う す や か き
に た ゆ め だ





百日紅、良いキムチ、此処にとて、臼や柿、似た夢だ




最高に、ルイコスタ、好きに揶揄、べムと亀、理知的だ


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長い熟成を経て、とても良いキムチができたと思う。
それは、そう、百日紅よりも、あなたが気になる、あの娘のほっぺよりも、真っ赤な色なのである。



「日本でだって、良いキムチ作れるのよ」



わたしがそれを自慢すると、ルイコスタは



「辛さ、色味ともにマダマダ。モウヒトタタキ」



と、調教師のようなコメントを残す。
この競馬好きの甲斐性なし!お前は韓国人か!
(しかしそんなルイが、最高に好きなわたしだった)



それから二人で、夢の話をした。



わたしのゆめには、臼や柿がでてきた。そう、わたしはカニだった。憎たらしいことにルイは猿で、お尻はやっぱり真っ赤だった。何かに似た夢である。



ルイは、
「ベムです。あとカメ?がデテキマシタ。やっぱりどちらも、人間とオンナジでした」



ベムとは、妖怪人間ベムのことである。カメとはおそらく、タートルズのことだろう。
昨夜、わたしたちはリビングに並び、「人間になりたい特集」を見た。それにベムや、そのカメが出てきたのである。



わたしは懐かしいわ〜なんていいながら見てた。


ふと隣をみて仰天した。ル、ルイが泣いている!
そして彼は静かに、どこか理知的な表情で呟く。



「仲間に入れてモラエナイの、可哀想デス。
ボクと同じです。国境を越えても、生きものは生きものナノニ。形アルモノ、心アルモノ、決して差別サレルベキではない」




おぉ・・ルイ・・
ところであなたは何人なの・・
とりあえず韓国人ではないわよね・・・




今日の晩食は、ルイの好きな石焼ビビンバである。
この変な外国人は、嬉々としてそれをかき混ぜる。



わたしのキムチはまだまだ辛さも、色味も足りないかもしれない。
それでも良いのだ。それでもこの外国人は、嬉しそうに食べてくれるから。





ひょっとしたら、ほんとに万が一だけど、この恋が、万馬券かもしれない。
この国籍不明の、競馬好きの、韓国フリークの、優しい人が。




わたしは半分ぼーとしながら、視線を彼に投げてみる。




「ねぇ、モウヒトタタキ。モウヒトタタキください」




やかまし。





わたしは小さく笑ってスリッパをつっかけ、重たいお尻をあげて、炊飯器へとむかった。










散文(批評随筆小説等) シリーズ 正方 1 Copyright あすくれかおす 2008-02-15 10:36:41
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