枝
アンテ
垣根の灌木の枝は
年じゅう好き勝手にのびるので
つい気を抜くと
目も当てられない状態になる
裁断ばさみで
枝を切り落としながら
つい考え事をして
ざっくり切ってしまうと
枝のあいまから
なつかしい物が転がり出てくる
それは
大切にしていた玩具だったり
友達からの手紙だったり
さまざまで
きっとだれかがいたずらで隠したのか
風に飛ばされてひっかかったのだろう
縁側にすわって
しんみり眺めていると
だんだん輪郭が崩れて
枯れ葉に変わり果ててしまう
そのたび
机の引き出しにしまっておくので
もうずいぶんたまったけれど
時折
思い出して確かめてみるけれど
葉っぱは葉っぱだ
引き潮のあいまに
庭に出て
裁断ばさみで枝を切っていると
垣根の向こう側から
くり返し波の音が聞こえてくる
こうして
海水に洗われながら
健気に庭を守ってくれているのだし
好き放題
枝をのばさせてあげようか
などと考えていると
また
枝を切りすぎてしまう
ばさり
枝が地面に横たわる
音が聞こえる
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