一羽の鶯の命日とも呼べる或る冬の日
朽木 裕
上品なうぐいす色をした、ふわふわの翼
雪降る前の寒々しい日、
びうびう風は吹き荒れて、
いつもにぎわう公園には誰一人いない
空を仰げば揺れる電線、
どんどん雲は流れ流れて、
しん、冷えたコンクリートには
上品なうぐいす色をした、ふわふわの翼
静かに静かに目を瞑る一羽の鶯
一瞬、動くことが出来なくて
私は鶯の前に呆然とただ立ち尽くした
死
その一言が緩やかに喉元に降りてくる
強風に背中を押されるように
私は彼の前にしゃがみこむ
ハンカチでそぅっと抱き上げる瞬間、
ふ、と触れた確かな確かなぬくもりに
生
目は静かに瞑っていて
見れば右足は痛々しく折れていて
仄かにあたたかい命
けれど決して開かない瞳
不意に後ろから声をかけられて
私の手の中を見遣るお婆さん
「貴方は優しいのね、」
そういう声が心に沁みて
沁みてようやく涙が滲む
見知らぬ彼女と肩を並べて歩く
犬が来そうにない小高い丘まで歩く
そうっと草を分けて枯葉をどかして
静かに静かに横たえる
寒くないように枯葉を少しかけて
二人で静かに手をあわせる
「じゃあ、さようなら、ね」
かすかにお辞儀をして彼女と別れる
冷たい風がびうびう吹く日
一羽の鶯が死んだ、日