「線区」
菊尾

言いたかったんだけど
きっかけが見つからなくて
その日は言わずに残した
次なんて
無いかもしれないのに

眩しさで何も見えないから
何度か右眼をこすった
駆け足で橋を渡る
すぐ隣の鉄橋で
列車が音を鳴らして通り過ぎた

水面に浮かぶ雲の中へ足を入れる
綺麗すぎて危ないから
繊細すぎて触れないから
後回しにするための言い訳は
幾つ並べても正しくなれないよ
先には離れた5分前の雲
次の雲が足元を浸して行く


気付いているから遠くを見ている
知ることに対し怖く思うのは
過去が今を覆うから
出来るだけでいいので
嘘にならない事象を下さい

旋回するのはグライダー
喧騒を忘れさせてくれるのは高い空
僕が振り返るのは
君の声にだけ


自由詩 「線区」 Copyright 菊尾 2008-02-13 19:55:10
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