「線区」
菊尾
言いたかったんだけど
きっかけが見つからなくて
その日は言わずに残した
次なんて
無いかもしれないのに
眩しさで何も見えないから
何度か右眼をこすった
駆け足で橋を渡る
すぐ隣の鉄橋で
列車が音を鳴らして通り過ぎた
水面に浮かぶ雲の中へ足を入れる
綺麗すぎて危ないから
繊細すぎて触れないから
後回しにするための言い訳は
幾つ並べても正しくなれないよ
先には離れた5分前の雲
次の雲が足元を浸して行く
気付いているから遠くを見ている
知ることに対し怖く思うのは
過去が今を覆うから
出来るだけでいいので
嘘にならない事象を下さい
旋回するのはグライダー
喧騒を忘れさせてくれるのは高い空
僕が振り返るのは
君の声にだけ