2月14日、前日のコンビニ
北大路京介


コンビニエンスストア
レジにバイトのオバちゃん
ビターの板チョコ1枚だけ買おうとする若い男
店内、他に お客はいない


レジ:おにいちゃん、なんでチョコレート買うねんなぁ
   明日になったら ぎょうさん貰えるんやろ?

 男:今日食べたいんです

レジ:一日ぐらい我慢したらどうやの?

 男:いま食べたいんです

レジ:そしたら、彼女に電話してバレンタイン前倒ししてもろたら ええやないの

 男:彼女いないですし…

レジ:じゃぁ、それ、オバちゃんからのバレンタインチョコレートや
   持って帰り

 男:お金払いますよ

レジ:ええから、持って帰り
   そや
   後ろにバレンタインチョココーナーがあるやろ
   そこから、好きなん選び
   オバちゃんからプレゼントや

 男:・・・。

レジ:チョコっとラブや

 男:・・・。

レジ:オバちゃん、プッチモニに似てるって よう言われるんやで

 男:・・・。

レジ:遠慮することあらへん
   バレンタインチョコ、どうせ売れ残ったら半額で売るんやし
   それにな
   おにいちゃん、うちの死んだ旦那に よう似てるねん
   オバちゃんから、チョコレートもろてくれるか?

男は黙って俯くと大粒の涙を流した


 男:お、俺、、、
   こないだ大好きだった恋人にフラれちゃって
   ここ 今年の バ、バレンタインは
   い 「一緒にチョコレートケーキ作ろうね」って 話してたんすけど
   ・・・ もぅ いま チョコレートしか 喉を通らなくて
   うぅ

レジ:泣いたらええ すきなだけ泣いたら ええ

 男:じつは今年、ひとつもチョコもらえなかったら 死のうと思ってたんす

レジ:そうか オバちゃんも死にたくなるぐらいの失恋してきたで
   欲しいだけチョコレート持って帰りっ
   店長がいいひんうちに持って帰りっ

 男:ありがとうございます!


男は深々と頭をさげると チョコレートを抱えきれるだけ持って店を出ていった



こっそり見ていた店長:「チョコで救える命がある。。。」


自由詩 2月14日、前日のコンビニ Copyright 北大路京介 2008-02-13 17:46:58
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