きみは東京に住んでいる
簑田伶子
コンセントから漏電した原色の((わすれないで))はフィクションとなり
凝固剤の足りない夜の水槽で泳ぎも歩きもできない会話
壁の星は衰弱することもなく私たちを照らすこともなく
カタカナで書くとたいていどの土地の名も悲しいときみは知らずに
雑踏にまたがる虹をひき剥いだ猫の足を追わずにいる空
はめごろしの硝子を見上げたままで着信音を反芻している
まだもっと上にいきたいと言うための最上階できみは綺麗で
信号の傘下となった交差点からあふれだす雪は苦くて
熱視線のようにこごえる東京のコンクリートにきみはいらない