甘いひと
恋月 ぴの
わたしを手渡されたときの
あなた
ちょっと驚いたように目を丸くしてたよね
ぎこちなく両手で受け取ってくれて
すなおにお礼を言ってくれた
わたしは
この日のために生まれてきたようなもの
だから
あなたのそんな仕草がいとおしい
たとえ仕事上の義理であったとしても
そこに何らかの気持ちが込められていて
はにかんだ笑顔と「ありがとう」
感謝してもらえるなら
それはそれで良いのかなと思ってしまう
ひとり暮しの小さな部屋に帰った
あなた
わたしの素顔を見つめてくれて
嬉しいような
恥ずかしいような手つきで
甘い一粒を口に含む
ね、美味しいでしょ
わたしは
この瞬間を思い描いてきたのだから
口のなかで優しく溶けて
とびきりの甘い夢の世界で遊んであげる