彼女の時
よしおかさくら

リズムを上手い具合にはずしながら
ボタンを素早く全てはめ終えて
彼女は微笑みをもって振り向いた

時間をうまくつかまえられた例は無かった
今夜は初めて定刻通りにコトがすすんだ
彼女の時間を腕のなかに閉じ込めたはずが……

バスルームから水音が聞こえていたのは
いつのことだろう?
滑らかな囁きが鼓膜を
くすぐっていたのはいつだったんだ?
彼女の途切れがちの声が
耳に流れ込んでいたのはいつだ?
彼女の時間のなかに俺は居るのか?

彼女はコーヒーを
飲みながら
誰かとの会話の海に
漂う

彼女は電話で必ず軽い嘘を吐く
笑い声を作りながら
ペンで落書きをしながら
澄んだ声で告げる
本当のような嘘を

ハンドバッグが揺れる
彼女は砂時計を取り出すと
ひっくり返して置いて行った。

時間をうまくつかまえられた例は無かった
今夜は初めて定刻通りにコトがすすんだ
彼女の時間を腕のなかに閉じ込めたはずが……

バスルームから水音が聞こえていたのは
いつのことだろう?
冷たい囁きが鼓膜を
くすぐっていたのはいつだったんだ?
彼女の途切れがちの声が
耳に流れ込んでいたのはいつだ?
彼女の時間のなかに俺は居るのか?

彼女はお金に
嘘をつかない
好きな物を好きなだけ
買う

彼女は眠る


自由詩 彼女の時 Copyright よしおかさくら 2008-02-12 12:32:31
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