果物
月見里司
木立から湧き出る鳥たちを
眺めていた暖かい日差しを何度も
さえぎる影に飽きなかった三月の日は
あまり長くない
雨にかかる虹
のように見えるファントムでなくなった春が
そこまで来ている舌の上に落ちた
苦さを思い出しながら
手軽なせきりょうに身をあずけて眠る
沼にはいろいろな物が沈んでいますたとえば
軽の後部座席スポークの折れた車輪
今とても遠くにある四畳半の部屋
に置きっぱなしの頭蓋骨の標本とか
対角線でダンス
半袖はまだ体によくないと笑った
のが誰か忘れてしまっても花の
季節はいつも春
//2008年2月12日