想い
佐々木妖精
ロングコートのポケットに両手を突っ込み
ヒリヒリした寒気に急かされ散歩する
時々口元に手を当てて息を吐き
ひと肌の温もりを味わう
ふと思う
冬の息が白いのは
報われないまま死んだ誰かの想いが
私に気づいてって
漂っているのかもしれない
でも身体がないから
気づいて 気づいてって
漂うことしかできなくて
想いを体中で吸い込み
人んちの雨戸に口寄せする
指で触れて
気づいた
泣きたかったんだ
俺の指先で
きみはちゃんと
泣けている
涙だけを残して
誰かの想いは薄らぎ
消えていく
さようなら
報われなかった人
吐く息はまだまだ白い