想い
佐々木妖精

ロングコートのポケットに両手を突っ込み
ヒリヒリした寒気に急かされ散歩する
時々口元に手を当てて息を吐き
ひと肌の温もりを味わう

ふと思う
冬の息が白いのは
報われないまま死んだ誰かの想いが
私に気づいてって
漂っているのかもしれない

でも身体がないから
気づいて 気づいてって
漂うことしかできなくて



想いを体中で吸い込み
人んちの雨戸に口寄せする
指で触れて
気づいた
泣きたかったんだ

俺の指先で
きみはちゃんと
泣けている

涙だけを残して
誰かの想いは薄らぎ
消えていく
さようなら
報われなかった人

吐く息はまだまだ白い


自由詩 想い Copyright 佐々木妖精 2008-02-12 11:44:07
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