色彩美人
木屋 亞万

更紗のバンダナ帽は唐紅に染め抜かれ
隙間から漆黒の髪がさらさら流れる
乳白の花を模した髪飾りが前髪を留め
首には胡粉色のタオルを垂らしている
瞳は影のある弁柄色で
瞼へ控え目に隠れた
鼻筋は鋭い角度で横顔に
さりげなく聳えている
耳は堅そうな小ささのまま整って
笑うと口元から顔が崩れていく


崩されていく顔にこそ
身体は強い引力を感じる
表情に描かれる感情が
暖色に近づいていけば
いくほど強く迫る
胡粉の上を踊る唐紅に漆黒の尾
真ん中乳白の下に咲く笑顔
根源の純粋さに見える
周りの全てを吸収していく
静寂を崩すことにより
自分の領域を増やす
服飾が彼女に馴染んでゆく


駅前の花屋に並ぶ花を
忙しなく整理している
千歳緑の屋根の下で
浅黄萌黄若竹色の葉を手入れする
沈黙と荘厳を混ぜたような表情で
客が来ればすぐに
沈黙は崩され
笑顔と声が光りを放ちながら
瑠璃色のエプロンに零れる


帰り道はいつも
駅の方まで遠回り
花を眺め
たまに購入し
店員さんと話をする
私は花が好きなのだ



自由詩 色彩美人 Copyright 木屋 亞万 2008-02-11 13:35:44
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