さくら色の手紙
Rin.

風になり、花になり
ずっとそばで―――

今日は街に雪が積もって
めったにないことだとニュースでも騒いでいました
わたしはそのことが少しばかり怖くて
あなたの手を握ったのです
やわらかく華奢な手だ、と
初めて気がつきました

思い出したように引き出しの奥から
一枚の便箋を取り出して
かすれる、さくら色
その小さな手で綴られた言葉は
あなたの呼吸が薄まるほどに力を持って
わたしを抱きしめるのです だから
さくら色の手紙、あの日
捨ててしまえばよかった

遠く離れた部屋で
風にも花にもなれず、その苦しみを
あなたに背負わせながら
明日は晴れるでしょうか
紅茶を入れましょうか
彼はもう目覚めたでしょうかと
そなことを考えるあいまに
ふと溢れてくる涙
そういえばゆうべあなたが流した涙は
あまりにも澄んでいたと父から聞きました
あなたの前で泣かないことも
ありがとうを言わないことも
許してください

さくら色の手紙
返事は書きません
雪はもうやみました




自由詩 さくら色の手紙 Copyright Rin. 2008-02-10 09:49:54
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