穴の夜に
石畑由紀子
穴の夜に可憐な花を引きちぎる 心の底から憎まれたくて
『やさしさ』という字はとても丸いのでやわらかなものと誤解していた
ワンピースに西のワインがふりかかる とれない染みに焦がれど、遠く、
切り裂いてはくれないのだね 生肉は吊るされたまま血だまりだけが
白線のない理由がやっとわかった 飛び込みたかった電車は来ない
10時10分25秒 アナログは美しいまま孤独死をして
、こくり、石油ストーブが喉を鳴らし私の飽和に寄り添っている
ほどけない知恵の輪ひとつポケットに入れて このまま歩いてゆくよ
誕生日に切り花をください、燃えて、枯れ、何処にも還らぬ覚悟のための、