穴の夜に
石畑由紀子

穴の夜に可憐な花を引きちぎる 心の底から憎まれたくて


『やさしさ』という字はとても丸いのでやわらかなものと誤解していた


ワンピースに西のワインがふりかかる とれない染みに焦がれど、遠く、





切り裂いてはくれないのだね 生肉は吊るされたまま血だまりだけが


白線のない理由がやっとわかった 飛び込みたかった電車は来ない





10時10分25秒 アナログは美しいまま孤独死をして





、こくり、石油ストーブが喉を鳴らし私の飽和に寄り添っている


ほどけない知恵の輪ひとつポケットに入れて このまま歩いてゆくよ





誕生日に切り花をください、燃えて、枯れ、何処にも還らぬ覚悟のための、







短歌 穴の夜に Copyright 石畑由紀子 2008-02-10 02:09:56
notebook Home 戻る