不眠症患者の吐き気
榊 慧







 たった一つの心理でもって思う日々です。金属が大好物です。たまにヒトが棒状の金属を体に埋めてくれることがあります。そしてそれ以外は主に気配を気にしながら天井と壁の間で出来た蜘蛛の巣なんかを巻きつけています。大工道具があるのを見つけるといそいそと傍によりじいっと見詰めているのです。さながらその様子はまるで鯖のように感情が読めません、が、わたくしは恐らくクッキーが焼けるのをオーブンの前で待っている5歳児になっているんだ、と考えています。でも大工道具がクッキーのように見えるとは、どのような世界観を持っているのでしょうか。このことを液晶画面に怒鳴りつけたら「黒い折鶴でいっぱいいっぱいなんだ。沢山折りすぎちゃって、指が黒ずんでるんだけどね。」と言っていたので気にしないことにしました。
 右手の小指の爪が伸びているのに今気が付きましたのでとりあえず重症だ、と思いクトゥルー神話の実現に向けて救急車にへばり付きに行くつもりです。しかし、救急車は独走していないと思われるので消防署へ行かなければならな、い、の、で、すが。
 「まあなんて初々しい英語のテキストなんでしょう!ねえ、見て!まるで恋するオロナインのようだと思わない?!」マシンガントークばかりで五月蝿くその声をもって果てへと案内する滑り止めつきの指だし手袋が大きく揺れながら伝えました。わたくしは紅茶を淹れていたことを思い出したので慌てて無視してトイレットへと走ります。結局、滑り止めつきの指だし手袋はわたくしを案内してくれたことになりますね。かなり、いや、ちょっとばかり、断罪ですけど。
 さて、少しわたくしのことを出来る限り客観的に自己紹介いたしましょう。頭が高いので土下座しながら言いますね。くぐもって聞こえるのはアスファルトと鼻が仲良しだからでしょう。ああ、でも自己紹介をしますと、わたくしは明日レディースランチを湯呑に詰め込んでキスしなければならないそうなのでやめます。それに、スリルと罪悪感が、無くなってしまいますから。
 先日、ドクターに聞かれたのですよ。「愛って、何なんでしょうか。僕は気になって顔を洗うこともままなりません。」と。わたくしは威厳を搾り出しながら瞬きをせずに言いました。「何を、突然。どこかで会話を聞かれたのですか?愛とは、ハイツに住んでいる夫婦の、といっても余り仲はよろしくないんですけど、その夫婦の、次女の名前のことなんですよ、ドクター。それから、顔はやはり固形石鹸で、特に夜は念入りに、洗った方が良いですよ。」
 カテキン効果のおかげですね、赤いボールペンのインクが残り少なさ気なのも。ついでに、わたくしの89パーセントは蟋蟀で成り立っているというのを風の噂で知りました。ですが、所詮噂というものは古今東西酷く痛む左足のようなもの、いえ、それそのものといっていいでしょうからなんとも思いません。それで、なんですが、イニシャルGの諸君の視聴率が上がってきてるみたいなので、この続きは、一口草もちの賞味期限がわかったらということに6色入りパックのライトマゼンタがぐにゃりと歪んでいますからそうします。
 では、最後に。「天ぷらって、別に『てんぷら』で良くね?天の意味がわからん。知ってたら譲ってってば!」









P.S
そんなんだから、気が付かないのかもしれませんよ。でもわたくしにとってはもうどうでもいいみたいです。なに、少し寝不足なものですから。
 





散文(批評随筆小説等) 不眠症患者の吐き気 Copyright 榊 慧 2008-02-09 22:29:03
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