確かめもしないで
北野つづみ
雪
と思ったのは、鳥の羽だった
くるりとやわらかに丸まった羽毛が
風で、路上に転がって
ここで何が起きたのか知らない
鳥の姿も、形も無い
アスファルトには点々と
わずかな血痕が残されているだけで
早朝
両手をポケットに突っ込んだまま
歩調を緩めるだけで
立ち止まることはせず
うわごとみたいに想うのだ
世の中は
素通りすることが多すぎる
路上で
街角で
交差点で
見上げられる空の広さは
ほんの少し
そこで本当は何が起きているのか
確かめもしないで
二〇〇七年十二月十五日