拾われたひと
恋月 ぴの
紫色のくちびるを震わせ
熱いコーヒーで暖を取るわたしに背を向けて
あなたはストーブに薪をくべている
見覚えのあるチェック柄の毛布
あなたの匂いを胸一杯に吸い込んでみた
冬の嵐の去った
砂浜に打ち上げられていた
わたしの身体
あなたはふたりで暮した日々なんて
とうに忘れてしまったのか
表情ひとつ変えることも無く
わたしの身体を無造作に背負い籠へ放り込んだ
願い続ければ叶うことがある
背負い籠の中にはあなたが拾った
曲がりくねった流木とか
ハングル文字の読み取れるペットボトルとか
光の届かない海の底で
わたしは
あなたに再び逢えることを願い続けていた
ぶっきらぼうで
お世辞のひとつも言えないけれど
時折見せてくれる子供みたいなしぐさが好きだった
昔のように
あなたの好きな料理を作ったりは出来ないけれど
懐かしいこの部屋のどこかに
わたしの身体を飾ってくれたなら
満月の夜。寄せては打ち返す波の鼓動を聴かせてあげる