彷徨と空
「ま」の字

知らない町をゆく
晴天が聳え
すかんと何もかにも失せている
なるべくうまく置きざりにされて老いぼれたい

乾きたい乾きたい ああ 
かあ わ きたい の
曲がりくねった坂道むちゃくちゃに駆け散らし
どこでもない物陰から
ふるふると息を潜め見詰めていたい
血のように赤いの葉群れが
そばの壁で影なしてざわめくの 
おれは

死んでしまいたい 
とても

死んでしまいたい

街に葱の匂いがする頃
そおっと そおっと
このままそおっと行けてしまえさえしたら
とおてえとおてえ 
とてもきもちがいいだろう

銅鑼のような赤色を響かせて羞じらう夕日が
頬に与えたのはひと塗りの温み
腹のあたりから暖かいものが湧いてくる
なるべくうまく置きざりにされて老いぼれたい
町はずれに捨てられ
穢れた土のうえであおあおと喉あけて笑えば
いまさらに何もかも消えうせ
轟然として晴天を聳やかす




自由詩 彷徨と空 Copyright 「ま」の字 2008-02-08 21:17:30
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