彷徨と空
「ま」の字
知らない町をゆく
晴天が聳え
すかんと何もかにも失せている
なるべくうまく置きざりにされて老いぼれたい
乾きたい乾きたい ああ
かあ わ きたい の
曲がりくねった坂道むちゃくちゃに駆け散らし
どこでもない物陰から
ふるふると息を潜め見詰めていたい
血のように赤い木の葉群れが
そばの壁で影なしてざわめくの
おれは
死んでしまいたい
とても
死んでしまいたい
街に葱の匂いがする頃
そおっと そおっと
このままそおっと行けてしまえさえしたら
とおてえとおてえ
とてもきもちがいいだろう
銅鑼のような赤色を響かせて羞じらう夕日が
頬に与えたのはひと塗りの温み
腹のあたりから暖かいものが湧いてくる
なるべくうまく置きざりにされて老いぼれたい
町はずれに捨てられ
穢れた土のうえであおあおと喉あけて笑えば
いまさらに何もかも消えうせ
轟然として晴天を聳やかす