「赫い糸」
菊尾

アンティークの多い部屋
閉め忘れられたクローゼット
ベッドの上の会話
溶かされる為に生まれたんだって
アタリはあなたが引いたんだって
冗談なのか本当なのか
笑いかける君のこと
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もしもの話
私が屈んで小さくまとまれたら
どこかへ運んでくれる?
夢のように漂える場所へ誘ってよ
あなたが見ている世界は水中花みたい
私もそこへ連れてって
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交わる、歯止めなく、
誰にも踏み入ることのできない二人だけの庭
いずれ朽ちてしまうと分かっていても
今だけは口笛吹いて
屋根の上でも歩こうか

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斜め空
神様の子供達が黄色に染めた夕方六時
「ねぇ」って口癖は何回目だろう
ふらふら浮遊する君を見失わないように
小指に通した赤い指輪
メルヘンだって
やっぱり君は笑った
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不意にあなたがくれた赤い指輪
あの日から通したままの小さな指輪
迷子になっても探し出せるように
解けない私達だけの赫い糸
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止めどなく続けたら
持続する二人の息の紡ぎ方を
見つけだしてみせるから
どうかこの先も引き裂かないで
願いが燃え尽きて灰になっても
掻き集めて何度でも、何度でも
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ひとつひとつ瞬く天蓋
泣いているように笑っているように
影絵の森から抜けてきた二人
一色、指に灯して微熱を感じて
揺れて揺られて人になれるから
離れるのはもう、いいね
僕と
私の
話は閉じることを知らないまま
そっと
ずっと


自由詩 「赫い糸」 Copyright 菊尾 2008-02-08 20:41:38
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